見積もりの難しさ
ここで話を見積もりの流れに戻しましょう。この時計を受付するのにあたって、最も注目すべきなのは「前回のオーバーホールの際、リューズとリューズチューブをセットで交換しているのに、わずか半年間でリューズロックが半回転以下で解除されてしまう」という点でした。これはどのような事が考えられるのか?以下に3つの推測を述べます1.そもそもリューズやチューブを新品に交換していない。これは明らかな詐欺行為となり、まず考...
View Articleなぜネジ山は摩耗したのか?
リューズとチューブのネジ山が摩耗していた際、その理由が「使用されている方が毎日のようにリューズロックを解除して時刻合わせやゼンマイ巻き上げを手巻きで行っていた。」という場合、なぜそんなに頻繁にリューズロックを解除して操作する必要があったのか?という点が一番の問題となります。理由としては 1.精度誤差が気になり、毎日のように時刻合わせをしていた。...
View Article推測
最初のお問い合わせの時点で“4年弱で3回のオーバーホールを実施し、3回目のオーバーホール後半年ほどで交換したリューズねじ込み部分に不具合を生じたために使用を中止し、今回4回目のオーバーホールをしたい」との話を聞いた際、「過去3回いずれもメーカー/正規代理店によるオーバーホールでは無い事から、適切な処置をされておらず、ずっと動作不良のままだったのではないだろうか?」との疑念を抱いておりました。もしそう...
View Articleお客様への見積メール
前回、別会社での明細伝票には「ご依頼の時点で文字盤の固定用足が折れていましたので、今回も同様に接着対応しました。そのため、強度の保証は出来ません」との記載がありました。カレンダー付の時計の場合、この文字盤足折れを接着で処理すると、しばらくは問題が無くとも、カレンダーの表示ズレが発生したり、接着剤のカスなどで、カレンダー送り不良や時計そのものの停止の原因となる事が多いのです。確実な対処は、文字盤の入手...
View Article受注にはいたりませんでしたが
前回記事にしたメールの内容をお伝えした結果、お客様はメーカー修理をされる決意をされたようで、「5年後の定期オーバーホールの際にまた連絡させていただく事になりそうです」との返信をいただきました。今回は、結果として当社の受注=利益にはなりませんでしたが、このような返信をいただけると、長い目で見て決して損はしていないという確信があります。一連のやりとりから、今回比較的高価になる見積もりが出たとしても、この...
View Article見積CMWへの挑戦
記事にするとかなりの長文になりましたが、ここまでの内容をほとんどの場合、お問い合わせいただいてからその日のうち(24時間以内)に、判断してお客様に伝えます。現物をお預かり/拝見する前の問い合わせの段階で、時計の画像を添付してもらったり、過去の修理履歴を詳細に知らせてもらうなど、はっきり言ってお客様にとってはかなり面倒なのですが、このような手順を踏むことにより、開口一番「現物を見ないと分かりません」や...
View Article20年間オーバーホールしないとどうなる!?
多少の進み/遅れはあったものの停止せずに動作していたため、「そのうちオーバーホールしなきゃ」とは思っていたものの、気がつくと20年間オーバーホールせずに毎日使用し続けてしまい、いよいよ停止してしまったロレックス・デイトジャストRef.16233Gです。停止する前に10年以内でゼンマイが切れてしまう事も多いため、20年間使用される事は稀有なのですが、ロレックス、特にこの時計に搭載されているcal.31...
View Article20年の蓄積
まずは品番とシリアルを確認するためにブレスを外すのですが、本体とブレスをつなぐフラッシュフィット(弓管)部分には、20年の間に蓄積された汚れが固着しておりました。この固着物の正体は、汗や体からの分泌物に空気中の汚れやホコリが混じったものです。この汚れが汗で溶け出し、ワイシャツ(西日本ではカッターシャツ)の袖を汚すこともあるそうです。ワイシャツが汚れるだけならまだしも、この汚れは時計ケース本体やフラッ...
View Articleステンレスでもこうなります
やはり影響は本体ケースにまで及んでいました。表面の一部に凹んだような腐食が発生しているのがわかります。今回は奇跡的に大丈夫でしたが、フラッシュフィット内側にロウ付けされている、バネ棒固定用のパイプが腐食している例を数多く目にします。こういった腐食を防ぐ意図なのか、近年のロレックスはフラッシュフィットが無垢材からの切削によって作成されています。20年前と比べてロレックスの新品価格はかなり上昇しておりま...
View Article裏蓋保護シール
そして、裏蓋の保護シールも20年間そのままでした。この保護シールを貼ったまま使用し続ける危険性については、以前記事にしておりますので、そちらをご覧ください。http://blogs.yahoo.co.jp/tempus19seiko/folder/915761.html幸いにして、裏蓋表面の腐食はほとんど発生していませんでした。時計修理工房(有)友輝のホームページは↓をクリック時計修理工房(有)友輝...
View Articleリューズ/ねじ込み不良
~2000年頃までに製造されたロレックス、特にステンレス/18Kのコンビモデルの場合、このようにリューズが腐食と摩耗によってねじ込みが不可能となる事態が数多く発生します。ねじ込みが完全に行えなくなる前でも密閉/防水機能が低下してゆきますので、徐々に汗を含む湿気などが内部に混入し、オイルの蒸発や変質を引き起こして部品の摩耗を進行させ、更には広範囲のサビの発生につながります。これは、2000年頃までのリ...
View Articleオイル切れの見分け方
裏蓋を開けて内部に目を移すと、内部に侵入した湿気でオイルが変質し、自動巻き用ローター中心軸が錆びていました。この半円状の自動巻きローターは、当然ながら内部機械では群を抜いて重量のある部品です。そうでないと、とても腕の動きでゼンマイを巻くという作動は不可能ですから。高級時計ではローター外周部にプラチナや18Kを使用して慣性モーメントを生み出す設計になっているものすらあるくらいです。ここで厄介なのは、重...
View Article削られちまった悲しみに
ローター芯のサビがルビー穴石の周りに散っているのが確認できます。人造ルビーは圧倒的な硬度ですので、この状態ではローター芯を削りながら動作するのです。その結果、ローター芯(軸)とルビー穴石のクリアランス(隙間)が拡がり、ガタが生まれて時計の部品としては重量物であるローターが裏蓋や他の部位に接触し、それによって削れた成分が機械内部にばらまかれます。2枚目の画像ではローターと接触した部分のメッキが剥がれ、...
View Article文字盤の変色
ガラス越しでケースの陰にもなるので、最初の画像でもあまり目立たなかったのですが、直接文字盤を見ると、湿気でこのような状態になっております。16233Gではかなり珍しい黒文字盤なので残念!湿気が混入すると、内部の機械部品が錆びるのは勿論なのですが、このように文字盤の塗装の状態が変化する事も多いのです。この時計の場合、針のメッキのダメージはほとんど見受けられません。この逆のパターンで、文字盤はほとんどダ...
View Articleリューズ不良の結果
リューズとムーブメントを接続する巻き芯が錆びていることから、リューズねじ込みが効かなくなる前から防水不良となっていて、長い間ここから湿気が侵入していた事がわかります。巻き芯のサビが進行すると、通常の方法ではムーブメントから分離することが出来なくなる為、外装ケースからムーブメントを取り出せず、にっちもさっちもいかなくなり整備/オーバーホールがその時点から先に進まない、という最悪の事態が起こります。この...
View Article歯車の摩耗
酸化したオイルがサビの原因となり、さらにそのサビの成分が研磨剤のような役割をしてしまい、3番歯車の軸が上下とも摩耗しています。この3番歯車が停止の直接の原因でした。試験的に実証済なので判るのですが、この状態でもサビを除去すれば、とりあえず停止する事は無く動作します。ただ、テンプの振り角は確実に落ちますので、振動や姿勢差といった外的要因が加わると精度が乱れます。ロレックスの高精度を復活させるには、ここ...
View Article明朗会計
20年間オーバーホールせずに使用し続けたロレックス・デイトジャストRef.16233ですが、トータルの見積もりは以下の通りです。オーバーホール¥26,250ゼンマイ交換 ¥3,675ローター芯交換 ¥6,300 3番歯車交換 ¥5,250番歯車芯研磨×2¥2,100リューズ ¥15,750合計...
View Articleこれにて終了
撮影条件の違いからか、修理前のほうがきれいな画像となっておりますが、無事にオーバーホールが完了いたしました。当社に依頼されるロレックスのうち、基本料金が高いデイトナや、交換部品が多くなる1990年以前に製造されたものを除いた90%のものは、オーバーホール&部品交換で3.5~3.9万円という金額の範囲内に収まっておりますが、10年以上オーバーホールされずに使用し続けた場合は、このような\59,325と...
View Articleオメガ・スピードマスター3511.20
前回と同じような題材となりますが、停止せずに動作していたため、「そのうちオーバーホールしなきゃ」とは思っていたものの、気がつくと15年間オーバーホールせずに毎日使用し続けてしまい、いよいよ停止してしまったオメガ・スピードマスター・オートマチック3511.20です。このモデルの特徴として、年数を経るとベゼルに刻印されたタキメーターの塗装が剥離して画像のような状態となり、なんとも中途半端というか、ちょっ...
View Articleスピードマスター/プッシュボタン
使用年数を重ねたスピードマスターの場合、オーバーホール料金がかさむ原因となるのは、このプッシュボタンの交換が発生する場合です。オーバーホールせずに10年以上使用しますと、画像のようにボタンと本体ケースの間をつなぐ真鍮製のチューブ部に汗や汗に含まれる有機物、湿気、空気中のホコリやゴミが付着し、緑青の発生や腐食が進行する原因となります。その結果、ボタンの動作が妨げられたり、最悪の場合ボタンの脱落といった...
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