ちょっとお知らせです
1年ほど前より、業務多忙につき、いただいたコメントへの返信を控えさせてもらっております事をご了承ください。コメント欄を閉鎖する事も考えましたが、コメントをいただくのは嬉しいものがありますので、書き込みは大歓迎です。いつもコメントをいただいている方々へは、この場を借りて御礼申し上げます。また、コメントで質問をいただく事がありますが、同様にお答えしていない事も併せてご了承ください。今はお預かりした修理品...
View Article珍しい症例/cal.1861
2005年2月、親戚を通じてスピードマスターPro.(手巻)のオーバーホール依頼を引き受けました。その際、所有者の方から「クロノグラフのリセットボタンが固いので、その調整も同時に出来ませんか?」との申し出もいただきました。このスピードマスターPro.に使用されているムーブメントは、元々センター秒針と30分計の2レジスターで基本設計されていたところに、12時間計を後から半ば強引な設計で追加したという経...
View Articleリセットボタンの固さ
前回のオーバーホールから8年が経過した先月、「精度は問題ないが、クロノグラフのリセットが出来なくなり、12時間計だけ動き出してしまう」という症状で再び依頼がありました。この時点では8年経過している事もあり、手巻きスピードマスターの持病ともいえるリセットピンが折れた事による不良で、12時間計のスリップはストップレバーの調整で解決の見通しを立てていました。その際「その後もリセットは固いままだったので、や...
View Article原因判明
まず、バネが折れるのは無理な力が加わったのでない限り、物性が必要以上に「硬い」から折れたという事です。弾性があれば力が加わっても折れずに機能し、柔らかければ曲がったままになります。本体ケースに組み込んでプッシュボタンで操作する限り、このバネにそうそう無理な力は物理的にかけられません。という事は、このバネが規定以上に「硬かった」のがリセットレバーの固さを生み出していたのではないかと推測いたしました。そ...
View Article水入りの恐怖
ちょっと連載途中で割り込む形になりますが、どうしても見てほしい画像なものでご容赦ください。昨日夜に洗濯機で洗ってしまったロレックスが持ち込まれました。幸い、本日まだ動作する状態でご持参いただいたので、水入り時計としては重症の部類に入らない状態で応急処置が出来ました。ただし、自動巻き切り替え車に湿気が滞留したようで、片方だけが画像のように錆びておりました。水入りさせるとわずか一日で時計の内部はこれだけ...
View Article押してダメなら引いてみる
本体とブレスをつなぐ「バネ棒」も御覧のような状態です。当然サビついて固着しているので、この状態のまま無理に外そうとすると、バネ棒が傷だらけになるだけでなく、工具を滑らせてブレスやケース本体に大きな傷をつける恐れがあります。こういった場合は以下のような対処方法が考えられます。1.内部の機械を取り外したのち、このまま洗浄用の超音波洗浄機にかける。超音波の微振動でサビの固着が分解され、バネ棒の可動部が動か...
View Article情報に踊らされない事
裏蓋を開けて内部を覗くと、ご覧のように各部品の表面が曇って変色しています。これは、プッシュボタンから侵入した湿気による影響です。それにしても、これだけ湿気が浸入した痕跡があるにもかかわらず、スチール製の部品にあまりサビが発生していない事がわかります。これは、部品の表面処理やメッキ技術の進歩によるものです。1970年以前のクロノグラフの場合、このプッシュボタン周辺に酷いサビが発生しているものが少なくあ...
View Article学校で教わらなかった事
ちょっと途中で割り込む形になりますが、前回の記事が「情報に踊らされない事」だった事に加え、この時期になると、ここ数年思う事があり、時計と直接は関係無いのですが、以前から記事にしてみたかった事を書きます。 地域もしくは年代によっても異なるとは思いますが、私が小学生の頃、複数の先生から「スイスは永世中立国といって素晴らしい国なんですよ」と繰り返し教わりました。...
View ArticleSo do the Swiss
徴兵されて軍事教練を受けた男子がいる事も多いので、スイスの各家庭には国から支給された自動小銃が「常備」されています。さすがに弾丸は別所で集中管理され、有事の際にのみ支給されるそうですが、近年まで装弾されたまま、いつでも持ち出せる「発砲可能」な状態で常備されていたそうです。マッターホルン周辺のトレッキングの際には、日本では見る事の出来ないF-5E戦闘機が、山岳地帯を縫って攻撃してくる敵機を想定した激し...
View Articleスピードマスター・オートマチック見積もり完了
15年間オーバーホールに使用し続け、各部にダメージが見受けられたスピードマスター・オートマチック3511.20の見積もりは以下の通りです。オーバーホール ¥31,500ゼンマイ交換 ¥2,625パッキン交換 ¥735プッシュボタン×2 ¥6,300巻き上げ車交換 ¥2,100センタークロノ針交換 ¥1,575バネ棒×1 ¥735合計...
View Articleスピードマスターのタキメーター
オーバーホールが完了し、お引き渡し直前のスピードマスターです。今回の作業でポイントとなったのは、ガラス外周のタキメーターベゼルです。お預かりの段階で、既に経年劣化によってペイントの剥離が進行しており、超音波洗浄によりさらに剥離が進行する事が予想されました。さらにはバネ棒が固着している事から、バネ棒を外すために超音波洗浄を通常より長時間行う必要があった事から、お客様には見積もり段階で以上のようにお伝え...
View Article架空オーバーホール記録??その1
これから、10年間使用して2分/日の遅れが出たシーマスター300・オートマチック2255.80を取り上げますが、今回は別の切り口から、という事で、最初から修理メニューとお客様に請求させていただいた金額を公開いたします。オーバーホール ¥21,000パッキン交換 ¥525ゼンマイ交換 ¥2,100ローターベアリング交換 ¥4,200 4番歯車交換 ¥1,575合計...
View Article省略するのはどの部品?
このシーマスターで部品交換を極力省略するとしましたら、¥4,200と比較的高価で、交換を行うための専用工具と、交換作業にある程度のテクニックを要するローターベアリングが筆頭に挙がります。画像中心部に見える、いくつか穴のあいている部品がローターベアリングです。このローターベアリングは自動巻き回転錘の動作の要となる部品ですので、劣化しているにもかかわらず交換を省略しますと、当然自動巻き上げの効率が落ちる...
View Article歯車交換を省略したら?
非常に細い軸ですので、名いっぱい拡大してもなかなか分かりにくいのですが、赤丸で囲んだ4番歯車の軸(上ホゾ)はかなり摩耗し、無数の筋目が刻み込まれています。この4番歯車は英語名”second...
View Articleゼンマイ交換の必然性について
販売前の商品を整備するときに限らず、直接お客様から修理品を預かった場合でも、切れていなければゼンマイは交換しない、という修理店も多いのは確かです。まだ使えるゼンマイを交換するのは、無駄な部品代を転嫁することになる、という考えも勿論間違っていないのですが、当社では原則4年以上経過したゼンマイは交換することにしています。一番の理由としては、ゼンマイの寿命予測は難しいため、ゼンマイ交換していない場合、オー...
View Articleわずかな金額をケチったばかりに
最後は裏蓋のパッキンですが、最近は材質の進歩で通常3~4年程度での劣化はほとんどなく、仮に再使用したとしても、しばらくは気密を保つことが可能です。しかし、それからまた4~5年使用されることを考慮しますと、変形や劣化により、徐々に気密が失われてゆく可能性があります。内部機械の外周部に見える、黒い輪ゴム状のものが裏蓋パッキンです。役割、材質ともに水道蛇口のパッキンと同じようなものです。年数が経過すると、...
View Article重症サブマリーナRef.16610
一見すると、非常に状態の良好なロレックス・サブマリーナRef.16610です。しかし、最終的にはオーバーホール/部品交換で¥65,050という金額がかかりました。1990年以降に生産された3針のロレックスの場合、当社で5万円を超える修理となる例は、全体の3%ほどです。この水入りなどの形跡もないサブマリーナは、どうしてこんな高額の修理となったのか?お客様からの聞き取り調査で判明した使用状況の詳細や、内...
View Article重症サブマリーナ/その2
当社独自の受付手順に沿っていただき、お客様の手元にある段階で、問い合わせフォームからサブマリーナの画像と現在の状態を知らせてもらったのですが、その段階で非常に気になる記述がありました。「1年ほど前、ワインディングマシーンが壊れたため、手巻きにて動作させていましたが、カリカリと空周りして巻けなくなりました。その後、手振りにて動作させていましたが、昨日になって時間合わせなどのリューズでの操作が全くできな...
View Article当社ホームページと過去の記事はこちら
このブログで紹介しておりました、ロレックス、オメガ・スピードマスターを中心としたオーバーホールの詳細な実例を解説した過去の記事やコンテンツは、順次こちらの当社の公式ホームページとブログへ移動しております。時計修理工房(有)友輝のホームページhttp://www.yuuki-tokei.com/当社ブログhttp://www.yuuki-tokei.com/blog/
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