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Channel: 時計修理工房(有)友輝の修理記録
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省略するのはどの部品?

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このシーマスターで部品交換を極力省略するとしましたら、¥4,200と比較的高価で、交換を行うための専用工具と、交換作業にある程度のテクニックを要するローターベアリングが筆頭に挙がります。
画像中心部に見える、いくつか穴のあいている部品がローターベアリングです。

このローターベアリングは自動巻き回転錘の動作の要となる部品ですので、劣化しているにもかかわらず交換を省略しますと、当然自動巻き上げの効率が落ちるため、装着前にねじ込みリューズを解除して手巻きする事が必要となり、半ば無理矢理作動させる結果となります。

始末が悪いのは、交換しなくとも完全な停止や精度不良が発生するわけではないので、ユーザーから巻き上げ不足による持続時間不足や精度不良の申し出があったとしても、売った側が「手巻きして巻き上げ不足を補ってください」と言ってしまう事です。

その結果、使用の度にリューズロックを解除して手巻きを繰り返すことでリューズとケースにロウ付けされているリューズチューブのネジ山の摩耗が進行し、ネジ山がすり減りきった段階で両方とも交換が必要となり、ロウ付け加工を含めると¥15,750という高額の修理代がかかるのです。

このシーマスター300・オートマチック2255.80の場合、ねじ込みリューズとチューブの寿命を延ばすためには、劣化したベアリングの交換を行い、極力自動巻きだけで動作を維持して手巻きする事を避けるのと、適切なオーバーホール作業と精度調整をきちんと行う事で、時刻調整のためのリューズ操作の頻度を下げる、といった点が重要となります。

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