仕上げ/研磨をおすすめしない理由
幸いにして、湿気や紫外線で劣化しやすいブルー文字盤が無事でしたので、無反射コーティングを剥離し、針を全交換した事で画像のような状態に回復いたしました。特にオメガ・スピードマスターの場合は仕上げ/研磨作業に費用をかけても、それほどの視覚的効果が得られません。個人的には、当社オーバーホールのメニューに含まれる本体ケース・ブレスを含めた外装の超音波洗浄を施す方だけで充分だと考えております。オーバーホール/...
View Article「無料」の裏に隠された真実
出勤途中で見かけた、この自転車。チェーンのサビも進行して固着しており、確実に道端に放置=廃棄されたものでしょう。よく見ると、何年か前に、某携帯会社が他社からの乗り換えをすると、その特典として無料で配っていたキャンペーン品のようです。所詮無料のものですし、あまり大切にされないまま使用され、すぐに放置されたのではないでしょうか。携帯のキャリア(会社)を変更しても、電話番号が変更されないMNPの実施依頼、...
View Article自動洗浄機
現代の時計修理において欠かせないのが、この超音波自動洗浄機です。かつては、時計のオーバーホール(分解掃除)を行う際、完全分解した部品の1つ1つを小さい刷毛を使用してベンジンで洗浄する“手洗い”が主流でした。昭和40年代後半に、国産で比較的安価ながら満足できる性能の機種が発売され、日本においても超音波自動洗浄機が普及しました。安価と言っても、それはスイス/米国製に比較しての話で、比較的大きな時計店でも...
View Article自動洗浄機の有効性
自動洗浄機の効果が発揮される個所の一つとして、ガンギ車部の穴/受石部分が挙げられます。手洗いの場合の洗浄/注油方法としましては、金色のクワ型のバネを解除し、受石を外して裏の平面部にオイルを載せたら、そのままズレないように(ズレるとオイルが拡散します)穴石の上に被せてバネをセットする、というのが一般的な方法になるかと思います。このバネはオイルの蒸発と、衝撃が加わった際にガンギ車が破損する事を防止する役...
View Article自動洗浄機の有効性 その2
ただし、酸化して固まってしまった古い油などは洗浄しきれないため、事前にバネ+受石を外して、洗いハケで手洗い洗浄した後に自動洗浄します。10倍以上の顕微鏡を使い、宝石用の透過照明を下部から照射すれば、僅かなゴミや洗浄しきれていないことによる石の曇りなどは即座に発見できます。自動洗浄も万能ではないので、この顕微鏡による確認が非常に大切な作業となります。自動洗浄機のみに頼らず、状態を顕微鏡で確認し、必要と...
View Article自動洗浄機の有効性 その3
1950年代中期以降のロレックスは、オーバーホールの際に、自動洗浄機を使用する事を前提として設計されています。Cal.1000以降、ロレックスの自動巻きはローターが左右どちらに動いてもゼンマイを巻き上げる両方向巻き上げ方式となり、巻き上げ効率が飛躍的に向上しました。その機能をつかさどっているのが、この赤い切換車です。切換車はその構造上、自動洗浄機を使用しないと完全な洗浄が難しいのです。時計修理工房(...
View Article自動洗浄機の有効性 その4
画像は、軸が摩耗したために廃棄する切換車の圧入リングを外してみたところです。リングの下に、一対の天秤状の部品が封印されている事がわかります。この部品が完全に洗浄されていないと、巻き上げに不具合が生じ、停止や精度不良、持続時間の不足といった問題が発生します。洗い刷毛(小さなブラシ)を用いる手洗い洗浄ですと、この部分の完全な洗浄は物理的に不可能なのでは無いかと思います。特殊な専用洗浄液を使用し、回転によ...
View Article自動洗浄機の有効性 その5
現代の機械式時計をオーバーホールする際には、自動洗浄機が不可欠である事をご理解いただけたことと思います。しかし、自動洗浄機を過信する事は禁物です。最近の改良されたオイルでは少なくなりましたが、オイルの酸化が急激に進行し、オイルがガム状に変質してしまうと、自動洗浄機による通常の洗浄メニューでは除去しきれない事があるのです。その場合は、逆に古典的手法である洗い刷毛での手洗浄が有効となります。自動洗浄機と...
View Article自動洗浄機の有効性 その6
近い将来オーバーホールをご検討中の方々へご依頼される修理業者がメーカー/正規代理店以外の場合、大事な時計を預ける前に、自動洗浄機を用いてオーバーホールしてくれるかどうかを確認してください。自動洗浄機は大変高価な機材ですので、これを導入せずに手洗いだけでオーバーホールを行っている業者は少なくありません。また、修理受付をする店頭には自動洗浄機が展示されていても、手洗いのみで安価に引き受ける外注業者に丸投...
View ArticleエクスプローラーⅠ Ref.14270 その1
当社でオーバーホールを請け負うロレックスの場合、製造から20年以内のものでしたら、90%以上が部品代込みでも¥36,000~¥39,000程度の金額で作業が済んでおります。「新品購入から15年、それまで異常は無かったのに突然止まってしまった」というRef.14270エクスプローラー気粒技燦積りのご依頼がありました。15年間オーバーホールはされていないものの、ずっと異常は無かったのに、突然停止したとい...
View Article重症エクスプローラーⅠ その2
リューズで手巻きを行うと、“ガリガリ”という、何ともイヤな感触が伝わってきます。即座に「これはあの箇所がやられているな」と推測しました。1枚目の画像は裏蓋を開封したところですが、問題の箇所は自動巻きユニットを外すと視認可能となります。...
View Article重症エクスプローラーⅠ その3
問題の箇所を覆っている受け板を外すと、このような状態となっておりました。ネジ穴を中心として歯車が回転する軸となっているのですが、その軸が摩耗して、歯車が中心からズレてしまっているのが確認できます。これは10年以上オーバーホールを行わなかったために、オイル切れの状態であったにもかかわらず、リューズでゼンマイ手巻きを行って、半ば無理矢理動作させ続けたために生じたものと思われます。ロレックスの場合、オイル...
View Article重症エクスプローラーⅠ/その4
このエクスプローラー気両豺隋停止した直接の原因はゼンマイ切れが発生したためなのですが、もしゼンマイ切れが発生しないまま、軸をすり減らせながら手巻きにより無理矢理動作させ続けると、最終的に画像のような状態となります。見事に歯車が3つに割れています。これは、歯車軸がすり減ってきて、中心軸がずれて偏芯していたところに、手巻きという、時計部品にとっては非常に大きな力をかけ続けたため、最終的に歯車が耐え切れず...
View Article痛々しいスピードマスター
内部に湿気が混入したため、全ての針に腐食が発生してしまった、オメガスピードマスター・トリプルカレンダー(デイ&デイト)3523.80です。さらには表面ガラスの無反射コーティングに無数の傷が入っていて、非常に痛々しいというか、正直みすぼらしい外観になっており、これでは腕に装着する気も萎えてしまいます。このスピードマスターをどのように修理/オーバーホールしたのか、これから順次紹介してゆきます。
View Article歯医者さんと同じです
ガラス無反射コーティングのキズの処理については、以前記事にしておりますので、そちらをご覧くださいhttp://blogs.yahoo.co.jp/tempus19seiko/folder/708880.html?m=lc&p=4プッシュボタンもこの通りですので、上下とも交換が必要です。このプッシュボタン内部のパッキン劣化のため、本体内に湿気が混入し、オイルの変質を招いて停止してしまったようで...
View Article仕上げ/研磨をおすすめしない理由
幸いにして、湿気や紫外線で劣化しやすいブルー文字盤が無事でしたので、無反射コーティングを剥離し、針を全交換した事で画像のような状態に回復いたしました。特にオメガ・スピードマスターの場合は仕上げ/研磨作業に費用をかけても、それほどの視覚的効果が得られません。個人的には、当社オーバーホールのメニューに含まれる本体ケース・ブレスを含めた外装の超音波洗浄を施す方だけで充分だと考えております。オーバーホール/...
View Article「無料」の裏に隠された真実
出勤途中で見かけた、この自転車。チェーンのサビも進行して固着しており、確実に道端に放置=廃棄されたものでしょう。よく見ると、何年か前に、某携帯会社が他社からの乗り換えをすると、その特典として無料で配っていたキャンペーン品のようです。所詮無料のものですし、あまり大切にされないまま使用され、すぐに放置されたのではないでしょうか。携帯のキャリア(会社)を変更しても、電話番号が変更されないMNPの実施依頼、...
View Article重症エクスプローラーⅠ/その5
無理な手巻き動作により磨耗してしまったホゾ(歯車軸)ですが、基盤プレートと一体成型となっており、ホゾだけを交換する事が出来ません。画像のプレートごと交換となるのですが、このプレート自体が非常に高価です。仮に当社でプレートを調達して交換するとなると、トータルの修理金額が日本ロレックスより高額となります。そこで、お客様には上記の説明を申し上げると共に、磨耗した軸の画像を添付して、最後は以下のようにお伝え...
View Article重症エクスプローラーⅠ/その6
当社の前に日本ロレックスへ見積もり依頼したところ、「文字盤と針を交換しない限りオーバーホール受付は不可能」という回答があったそうです。高価な部品である文字盤と針の交換代金が加算されて、想定以上の金額となった事もありますが、それ以上に持ち主さんは記念の品である、このエクスプローラー気諒源廚反砲交換されて、まるで別の時計のようになってしまう事を避けたかったのだそうです。新たに交換される文字盤は、細かな...
View Article重症エクスプローラーⅠ/その7
そんな経緯がありまして、何とか当社での修復を試みることと相成りました。このプレートは通常在庫しておらず、発注しても入荷時期の予測が出来ないうえに、たとえ入荷しても非常に高価な事が予想されるので、修復で対応する事にいたしました。ここで重要なのは、作業に取り掛かる前に、お客様へ上記の現状を説明し、さらに「本来はメーカーでプレート交換が必要となる事例です。修復したとしても元の強度は確保しにくいので、今後は...
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