Quantcast
Channel: 時計修理工房(有)友輝の修理記録
Viewing all articles
Browse latest Browse all 144

再修理

$
0
0
こちらで2階建てスピードマスターの解説を得意気に語っておりましたら、先月OHした
方から”センター針と12時間計が、まれにゼロに帰零しないことがある”という症状が
出るということで再修理の依頼を受けました。

この2階建てムーブメントですが、全くの新設計ということもありマイナートラブルは
少なくなかったようで、1988年の登場以来、様々な改良が繰り返されています。

今回のムーブメントは受けが金メッキされている”初期型”で、最初のOHの際も
そのマイナートラブルが将来的にも起こらないよう、留意して組み上げたのですが
見落としがあったようです。

お客さんが理解のある方で、再度足を運んでいただく手間があるにもかかわらず、
快く再度お預かりすることを承諾していただけました。
本当に感謝するとともに、それ以上にお詫びの気持ちでいっぱいです。

この数年だけでも、このムーブメントで再修理に持ち込まれたのは今回も含めて1~2例で
あり、同業者から言わせれば極めて少ない再修理率なのだそうです。

しかし、再修理率が少ないからといって、胡坐をかいてしまうことは許されることでは
ありません。

私が尊敬する人物の一人である本田宗一郎氏が、不良品の歩留まりを指して曰く、
”不良品の率が0.001%だって自慢げに言っても、その不良品を買っちまったお客さん
からしてみれば100%の不良品じゃねえか、それで安心してちゃいけねぇよ”

全くその通りです。
自分が修理を依頼する立場に立って物事を考えてみる、ということも、修理を行うに
あたっては実際の作業と同じくらい重要であると思っております。

それに、まだ再修理に持って来ていただいているうちは救われているのです。

1年以内に不具合が発生した場合、”あの修理屋はダメだ”と判断され、他店に
持ち込まれることも多いようです。
というのも、このパターンで私のところに持ち込まれるお客さんが案外多いからです。

ここで再度失敗したら、お客さんは時計修理という業種そのものに不信感を抱いて
しまい、修理の依頼は勿論、機械式時計を買うこともなくなってしまう”という思いと、
”他で失敗したことでも、自分ならやってみせる”というライバル心のような単純な
気持ちが相まって、こういった場合の修理には気合が入ります。

ちょっと長くなってしまいました。

今回のトラブルの対処方法は次回、紹介させていただきます。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 144

Trending Articles